沖縄⑤20.2.23

2/23(日) 6時起床。外はまだ暗い。外に出て、軒先に干していた洗濯物を収穫し、そのままあたりをぶらりとする。山沿いの道を歩くと、虫のイーンみたいな声がする。暖かい時期にきたら、蝉の声がものすごいのじゃないかな。
部屋に戻り、窓から明けていく空とその下の海をみる。上から水色、白色、やわらかい紅色で、ぐんぐん変化していく。台所に行き、昨日産直市場で購入したフルーツパパイヤを切ってみる。やわらかくて食べ頃。甘すぎもせず、珈琲を飲まない中で朝イチに食べる果物として最高によいな〜と思った。日はすっかりのぼって、漆喰のあとの残る壁にやわらかく窓のかたちを落としていく。
8時に朝食。食堂でほかの宿泊客のみなさんといただく。野菜のお惣菜と、かぼちゃのポタージュと、パン。とても美味しい。


半にお宿を出発。とてもよいお宿だったなー、また何人かで泊まって自炊をするのも楽しかろうな。海沿いの国頭東線を南下する。すれ違うのはバリバリにスピードを出したバイクばかりで、ヤンバルクイナに当たるんじゃないよ!と心のなかで呼びかける。朝の光はまだ黄色味があって、木々がやわらかい色をしていて美しい。途中で山を登り瀬高崎灯台による。眼下には水色の海に、もずくを養殖しているらしい四角が整列しているのがたくさん見える。
山を降り安田という集落に着いたので、公民館に車を停めてぶらついてみる。海沿いのその小さな集落はとても静かで、人の住んでいないような家もあれば、きれいに整えられた庭の家もある。窓が大きく開放的な家が多い。山羊の声がしたのでそちらに向かうと、小さな小屋に山羊が四頭いた。


こういった集落にはつきものの売店、『安田協同店』へ。店主は、まだ若い髪の毛をかっちりと整えた男性で、店の売り物には手書きの値札が添えられている。今まで立ち寄った協同店にくらべてだんぜん品数が豊富で、活気がある。珈琲をカップで購入、美味しい。おおきな木のならんだ広場があったので立ち寄る。沖縄特有のものにみえる小さな社と、その横に『平和之塔』と書かれたおおきな石。その下には58人の名前が書かれており、沖縄戦で亡くなった方達の名前ではないかと思う。
車に戻り南下、『ヤンバルクイナ生態展示学習施設』へ。ここでは、クー太という名前のヤンバルクイナの飼育されているのを観ることができるのだ。ヤンバルクイナは沖縄の東で生息している飛ばない鳥で、雑食性だ。もともとは飛ぶことができる鳥だったらしいのだけど、地上に食べるものがたくさんあるので、飛ぶ必要が無いなあと羽を退化させて、100メートルを10秒で走れるほどに脚を発達させたらしい。昔からの天敵はカラスやハブなのだけど、人間の持ち込んだマングースや犬、猫といった動物により数を減らしており、いまは1500羽程度になっているとのこと。昼間はなわばりの偵察などをし、夜はハブをおそれて木に登って眠るらしい。クー太は人間に警戒をあまりしめさない個体とのことで、ガラスの中を悠々と歩いている。もともとヤンバルクイナはとても警戒心のつよい鳥らしく、昨日大石林山で見ることができたのはほんとにラッキーだったんだな(見られたのは二メートルくらいの距離で、数秒ほどだったけども)。ヤンバルクイナは、飛ばない鳥の中でもいちばん北に住む鳥だそうです。


観察室を出て受付兼出口にもどる。受付のすぐ横に、手書きでものすごくプッシュされている居酒屋さんのチラシがあり、今夜の宿に近いなあと一枚手に取ってみると、受付のおじさんが「今日いく?」と10パーセント割引券を手書きして渡してくれた。行きます。
お昼の時間になったので、さらに南へいったところの東村という地区を目指す。しばらくして、カーナビ上、走っている道の右に「米軍演習場」とあるのに気づく。先へ進んでいくと、左手の路肩にセレナが何台も並んでとまり、水色の服を着たものものしい雰囲気の男性が十数名、大きなフェンスの前に立っていた。高江のヘリパッド(米軍ヘリコプター離着陸帯)につづく道路の工事と、それに反対する座り込みが行われている場所なのだと、その後に知る。
山を下り東村に到着、『サンライズひがし』へ。ふーチャンプルーを注文したのだけど、これが抜群に美味しかった。いい具合に柔らかな麩の歯ざわりよく、キャベツやもやしなどの野菜もシャキシャキで、ニンニクが美味しく効いている。今まで食べたチャンプルーたちと違い、味に甘みが出されていないのも好み。美味しかったな。


満足して車に乗り込み山の方へ向かい、サキシマスオウノキという根が板になっている大木を見、そのさきの『東村立山と水の生活博物館』へ。常設展の前のフロアでカエルの写真の企画展があり、その挨拶文を読んだところ、その企画展は千木良さんというカエル好きの方が博物館の職員さんに「カエルの写真いっぱい撮ってますよね、企画展してください」と頼まれて開催することになったのだけど、千木良さん自身はカエルの専門家でも写真家でもなく、ただカエルが好きで写真を撮っているだけにすぎないので、どうしたものかと頭を悩ませたらしい。でも何とか頑張って完成させたけれども、この企画展でカエルの魅力があなたに伝わらなかったらそれは私の力量不足です、でしめられていた。そうして開催されたこの企画展を見ると、色々なカエルの種類、生態、細やかな動作などがたくさんの写真に出されており、好きってパワーはすごいもんだなーと思った。
その先の常設展では、この東村で人々が山の仕事にどんな道具を使って生活をしていたのか、が展示されていた。このあたりでは、戦前戦後、山から薪を切り出して船で南の方へ運ぶという山の仕事がおおきな収入になっていたとのこと。陸での運搬は、人がものすごい量を背負ったり、馬などが荷台をひいたりしていたらしく、馬はほんとうに大切にされていたらしい。もし馬が事故死をしてしまった場合には、集落の皆が分担してその馬の身体を買い取り、次の馬を買うための資金としてもらうよう助け合っていたとのこと。こういった生活が数十年前まで一般的だったのだなあと思うと、ものすごく近くて、くらりとする。
車でさらに南下。慶佐次湾のヒルギ林というところへ。ここでは、沖縄最大規模のマングローブ(ヒルギ)林が遊歩道を歩いて見られるのだ。ちなみにマングローブとは植物の名前ではない。《 マングローブ(英: mangrove)とは、熱帯および亜熱帯地域の河口汽水域の塩性湿地にて植物群落や森林を形成する常緑の高木や低木の総称 》だそうです(Wikipediaから引用)。海でも育つことができるように進化するなんて、スキマ進歩がすごいなーと思う。根っこがたくましい。


歩いているうち、さらに緑の場所を歩きたくなり、進路を西にとり滝を目指すことにする。
西海岸に出てからさらに北上して山に入ったところの『比地大滝』へ。駐車場に車を停めて、遊歩道をどんどん歩く。日差しは強いけど木々がそれをさえぎり気持ち良い。しかしそれも前半だけで、後半はものすごい傾斜の階段のアップダウンが続く。30分ほど歩いたところでようやく滝に到着。
ところで、自分は滝を観に行くということが好きなのだけど、どちらかというと「滝に続く山の道を歩くのが好き」という人間であり、ようやく滝に着いても「たくさんの水が落ちているなあ」という認識で終わってしまい、なんというか、滝好きの人はもっとたくさんの楽しみを滝自身からもらっているのだろうに自分ときたら、という気分になるのであった。
たくさん歩いて、駐車場に戻った頃には4時。運動をしたのでめちゃんこ眠くなる。
そのあとは、海沿いの道をひたすら南下。道の駅に寄ったり、パン屋に立ち寄ろうとしたり(臨時休業だった)、渋滞にまきこまれたり。
なんやかんやで6時、ヤンバルクイナの施設で教えてもらった居酒屋『でんじろう』に到着。タマンのバター焼き定食を注文する。タマンは口先がすこし尖り気味のふざけた顔をした魚で、それが一尾まるまるパリッとバター焼きになっていて、レモンをかけていただいたらそれはもう美味しかった。テレビではサザエさんがはじまって、オープニングが愛知特集で岡崎の八丁味噌の画もあって嬉しくなる。会計時にヤンバルクイナのおじさんにもらった割引券(おじさんのサインが書かれてる)をお渡ししたら、「わ〜、小林さんだあ」とおかみさんがニコニコしていて、嬉しくなる。
店を出てスーパーに寄り、明日の朝食のパンを買い、となりのブルーシールの店舗でアイスを食べ(バナナのチョコアイスと、ピスタチオのアーモンドアイス)、今日のお宿へ。オーシャンビュー希望ヶ丘という名前のそのホテルは、名前の通り、希望ヶ丘という新しげな集落の上の、オーシャンビューの部屋だった。部屋はとてもひろくておおきなベッドが二つと、おおきなソファが置かれてある。
明日は本島の南端へ向かう。